さて、前回の続きです。

お姫様の苦難は実は「仕組まれた」ことだったのですが、それは一体誰が図ったことだったのでしょうか・・・。

この童話を知っている方、またユング心理学に通じておられる方は、既にご存じだと思いますが、そうです。
全ての試練は、最後の場面でお姫様を救い出した「王子様」による謀(はかりごと)だったんです。


つぐみの髭の王さま(王子様)はこう言います。
「おまえを愛すればこそのお芝居で、すべてはおまえの高慢ちきの鼻をへし折り、そのおごりたかぶりを戒めるためにたくらんだことなのだよ。」と。

それを聞いたお姫様は涙を流しながらこう答えます。
「本当に私が悪うございました。わたしなぞ、あなたの奥方になる資格はございません。」

昔の高慢な態度はすっかり姿を消し、何とも従順なお姫様に変容されています。


そのお姫様の言葉を受けた王子様は、
「安心おし、いまわしい日々は過ぎ去って、今度は二人してわれわれの結婚を祝うときだ。」

こうして、ようやく“ほんものの喜び”が始まったのです・・・。

このようにして、物語は幕を閉じます。


前回も書きましたが、昔から語り継がれてきた神話や童話には、「人のこころの成長や人生について」の真実が秘められています。

ですから、この『つぐみの髭の王さま』の物語も、決して絵空事ではなく、深層心理学的に検証すれば、私たちの人生そのものを表す重要な鍵があるのです。


ではここからは具体的に、お姫様にどんなアニムスの力が働いていたかを、河合隼雄先生の著書から引用してご紹介します。


まず、求婚者を次々にバッサリと“切って”しまうお姫様は、既に自身のアニムスの影響を受けています。

「アニムスの切断する力は強く」、その力が強くなると、「女性は俄然意見を主張し始めます。」

「感情にとらわれて正義を曲げることはできないと確信している」アニムスの力は強いのです。

そんなアニムスの力の影響を受けているお姫様が、求婚者を切り捨てていくのは当然とも言えるのですが、「結果として彼女は人から切り離された孤独を味わわねばならなくなる」のです。


それは勿論辛いことなのですが、
しかし、このような体験は、女性が自分の自我をつくりあげてゆくときにどうしても、ある程度経験しなければならぬことである。

と河合先生は述べられています。


これがアニムスを背負うことの苦しみとなるわけですが、でもこの苦難を通じてこそ、女性がより高い自我へと引き上げられるわけです。

どの女性の内奥にも存在するアニムス(男性性)。

このアニムスが肯定的にはたらくときにこそ、女性はより創造的に生きることができるようになります。

でもそうなるには、アニムスとの闘いは避けては通れないのです。


アニムスにとりつかれるのでもなく、アニムスを誰かに投影するのでもなく、自分の心のなかに存在するものとして、それと対話をつづけることによって、女性の自己実現がなされるわけである。

その過程を『つぐみの髭の王さま』語っていると、河合先生は指摘されています。



職場や家庭などで、周りの人となぜか衝突ばかり起こしてしまう女性がいたとしたら、もしかしたらご自身のアニムスの影響を受けているのかもしれません。

「芽が出ている」アニムスの力を、肯定的なものにしていくには、自分との対話が必要です。

「あの人(他人)がおかしいのだ。私は悪くない。」と言い続けているばかりでは、自分の内側に住む素敵な王子様と結ばれる日は、まだまだ遠いのかもしれません・・・。


次回も引き続き、「王子様」についてのお話です







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