ユング心理学では、「バランスをとる」ことが大切であるといわれています。

意識⇔無意識のバランスは勿論、それはどんな場面でも必要なのでしょう。

「一面に偏りすぎる」と、その忘れられた面のエネルギーが密かに力を蓄えていき、(無視された面は、それ自体がなくなるわけではないのです)いつか爆発して、自分に襲い掛かってくることになる・・・。
考えてみれば、とても恐ろしいことです。


このように書くと、とても抽象的なので、前回の「アニマ」をテーマに具体的な例を挙げてみようと思います。

ユング心理学研究で有名な、京都大学名誉教授の山中康裕先生は、このように述べられています。

「世の男性の中には、必要以上に男らしさを強調したがるタイプがたまに見受けられます。たとえば、甘えや妥協を許さず、自分にも厳しいが他人にも厳しく、そして時には女性を蔑むような言動を見せるといった具合です。このような男性は、男らしさを発揮しようと意識しすぎるあまり、自分のアニマに翻弄されて人生を狂わせてしまうことがあるので注意が必要です。」



このような男性は、自分自身の中にある(それは誰にも間違いなく存在する)アニマ(女性性)を否定し、抑圧しようとしています。

それゆえ、反動でその亡きものにしようとしているアニマが、意識に強く働きかけてくることになるというわけです。

自分の中にある異性を否定することによって、結局はその異性に翻弄されてしまうことになるなんて、何とも皮肉な論理ですが、でもそれが事実なんです。

どのように翻弄されてしまうかというと、例えばとても男らしく振舞っていた人が、急に自分のしてきたことに虚しさを感じ、歪んだ形で恋愛に没頭し始めたり、相手に対して節度ある接し方ができなくなってしまい、周りに迷惑をかけたり、ひいては自分自身をも破滅させる道に進んでしまうこともあるかもしれません。

そこまでひどい状態にならずとも、日常的にもそのような傾向が見受けられるような気がします。

前述の山中先生はこうも述べられています。

「このような(男らしさを強調する)男性にかぎって、感情の起伏が激しく、急に涙もろくなったりするものです。こういった“男らしくない”態度を見せてしまうのも、やはりアニマに翻弄されているためです」

例えば、意識が強く働いている職場と、意識の力が少し弱まる(本性が出やすい)家庭では、誰しも多かれ少なかれ「違う自分」になるとは思いますが、外ではバリバリに強い男性が、家庭内では意外と弱々しい面を見せる人もいるのではないかと思います。

それが、健全な範囲でなら問題はないのでしょうが、「行き過ぎて」いると、やはりそれはアニマに翻弄されているということになるようです。


もちろん、これは男性にだけ当てはまることではなく、女性が自身の内の「アニムス」に翻弄されていることも、ままあるようです。
(アニムスについては、また今後書いていくつもりです)



「バランス」の大切さを、最後に「中庸」の言葉の意味で締めくくろうと思います。

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中庸(ちゅうよう)

考え方・行動などが一つの立場に偏らず中正であること。過不足がなく、極端に走らないこと。また、そのさま。古来、洋の東西を問わず、重要な人間の徳目の一とされた。




           
           
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