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久方ぶりの記事ですが、実は今、思い立って直観的に書き始めています。

実は大分前からブログの新しい箱作りを検討していて、その実行の目途が立つまでは中身にも着手できないと考えていました。

遅々として箱作りが進まない中、結局記事更新もずっと棚上げになっていたのですが、そんな思い込みをザバッと持っていかれるような感覚を起こすきっかけをくれたのが、先日観たアニメ映画『海獣の子供』。



この映画についてはその内容や、観て私が感じたこと、考えたことについても、あれこれ‟言葉で”説明するのは愚鈍だと思います。


公式サイトのキャッチコピー「一番大切な約束は言葉では交わさない」

主題歌「海の幽霊」の歌詞 「大切なことは言葉にならない」
映画製作に携わった方たちの想いと覚悟も感じられます。





外部から聞こえることは、耳に届くだけでそれ以上浸透することはない。知性は分離された存在を導こうとしない。かくて、魂は空となり、全世界を吸収する。この空を満たすものこそ道である。
その内なる目と内なる耳を用いて、事物の核心を貫ぬくこと。すると知的な知識は不必要となる。                                           【荘子】

神は被造物たちの起源と終局を、親愛なる愛の関係のなかに結び合わそうとこころざして、天をその起源となし、人間をその終極となし給うた。

すなわち、一方は感覚の不滅なる対象のなかで最も完全なものであり、他方は地上に生命をうけ、死滅すべきもののうちで最も高貴なもの、ひとつの小さな宇宙である。

人間は自分自身のうちに星座の布置に呼応する自然の資性を、神聖な映像のように宿している。      
               【フィロン】(哲学者)

宇宙的原理が最も小さな分子の中にさえも見出され、その分子はしたがって全体性に対応しているのである。

その偉大なる原理、すなわち起源である宇宙が、小宇宙である人間のなかに吹きこまれていて、その人間は星のような自然界を反映し、かくして創造者の仕事の終極であり最も小さい部分でありながら、全体を内に宿しているのである。
                       【C.G.ユング】


言葉にならない‟大切なこと”を壮大なスケールで描いている作品です。



私の証得したこの法は、甚深にして見難く、難解、寂静、妙勝であり、推論の領域を超えた微妙なもの(後略)。
苦労して証得したものを、今や説くべき必要はない
                   【釈尊の言葉】『聖求経』


神の言葉は‟神の”言葉であり、神は神であり、キリストはキリストなのである。つまり、これを私たちはしっかりと見据えて、神の言葉(略)を人間の要素で汚さないことなのである。
                          【J・L・フロマートカ】


密蔵は深玄にして翰墨に載せ難し。更に図画を仮りて悟らざるに開示す。
(密教の教えは深く神秘的なために、文字では伝えがたい。そこで図像をもちいて、理解できない人の眼を開くのです。)
                                                                               
【空海】 『請来目録』



記事冒頭に引用した画像の巨大魚をはじめ、琉花が見たもの、体験したあの世界は、
「人間の言葉」では表現しきれないもののはずです。

それは、仏陀の語った世界観に通ずる「甚深にして見難く、難解、寂静、妙勝であり、推論の領域を超えた微妙なもの」であり、それを私たちは「人間の要素で汚さ」ずしっかり見据えなければなりません。



‟14歳”の主人公琉花、空と海。
彼らの目を通して「こころと存在」の広さと深みを堪能できます。

ユング心理学、生命原理、宗教、神学もろもろ、‟ Self ”に興味のある方には得るものが多くあろうかと思います。
‟ピン”ときた方にはぜひお勧めします。


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圧倒される映像美、深い物語、エンドロールで流れる音楽。
言葉にはならないものを、その他の素晴らしい手法で描き出し形にした
まさに海のような深い映画でした。