今からご紹介する文章は、かの文豪、当時数えで50歳だった夏目漱石が、
20代の芥川龍之介と久米正雄宛てに送った手紙です。
現代人は、とかく"馬になりたがる"ように思われます。
それはいたしかたないのかもしれません。
「仕事」や「用事」という相手だって、"いくらでも後から後からと出てきます。"
そうして、忙しい"我々を悩ませます。"
IT技術の革新は日進月歩ですし、扱いきれないほどの情報が溢れ、
私たちを取り巻く環境は、どうしてもスピード重視にならざるを得ないようです。
でも、私たちの内側、心の世界は、そんな「外側の環境」にきちんと順応できて
いるのでしょうか。
「物質的には豊かになったのに、心のバランスを崩す人が増えている」
これは、世間でもよく言われていることです。
心の不調は色んな形で表れてきますし、その引き金となった要因も
人によって様々です。
でも根本的には、置かれている外側の環境にばかり目を向け適応しようと
したため、内側の世界を置き去りにしてしまったことが、その人の心の深い
部分での地殻変動を引き起こしてしまったことによるものが少なくないようです。
「無意識からの逆襲」です。
どんなに恵まれた環境に置かれていても、この逆襲に襲われたら、
苦痛を避けることはできないでしょう。
「根なし草」という言葉があります。
日頃は見えないけれど、でもこの「根」が、地面の中できちんと育ち伸びて
いるからこそ、外側の木や花も大きく育つことが出来ます。
根がきちんと張っていないと、地面の上で成長した木や花も、何かの拍子に、
ポキッと折れてしまうことになりかねません。
これが「根なし草」です。
見えないがゆえに、ついついおろそかにしがちですが、
やはり「根」は大切なのです。
外側で、雨が降ろうが風が吹こうが、丈夫な根が育っているからこそ、
倒れることなく、いつか綺麗な花を咲かせ、立派な実がなる木に育つことが
出来るのです。
あなたの見えない根は、今どのような状態でしょうか?
少し歩みを緩めて、あなたの根である心にも、たまにはきちんと向き合い、
栄養を与えてみること。
決して無駄ではないと思うのです

(c)bakuhatuya|写真素材 PIXTA
"ありがとうございます"
20代の芥川龍之介と久米正雄宛てに送った手紙です。
勉強をしますか。
何か書きますか。
君方は新時代の作家になる積(つもり)でせう。
僕も其積(そのつもり)であなた方の将来を見てゐます。
どうぞ偉くなつて下さい。
然し無暗にあせつては不可(いけ)ません。
たゞ牛のやうに図々しく進んで行くのが大事です。
(1916(大正5)年8月21日)
(そして8月24日に、もう一通。)
この手紙をもう一本君らに上げます。
君らの手紙があまりに溌溂としているので、無精の僕ももう一度
君らに向かって何かいいたくなったのです。
いわば君らの若々しい青春の気が、老人の僕を若返らせたのです。
(中略)
牛になる事はどうしても必要です。
吾々はとかく馬になりたがるが、牛には中々なりきれないです。
僕のような老猾(ろうかつ)なものでも、
只今(ただいま)牛と馬とつがって孕める事ある相の子位な程度の
ものです。
あせっては不可(いけ)ません。
頭を悪くしては不可(いけ)ません。
根気づくでお出でなさい。
世の中は根気の前に頭を下げる事を知っていますが、
火花の前には一瞬の記憶しか与えて呉れません。
うんうん死ぬ迄押すのです。
それ丈(だけ)です。
決して相手を拵(こし)らへてそれを押しちゃ不可ません。
相手はいくらでも後から後からと出てきます。
そうして我々を悩ませます。
牛は超然として押して行くのです。
何を押すかと聞くなら申します。
人間を押すのです。
文士を押すのではありません。
現代人は、とかく"馬になりたがる"ように思われます。
それはいたしかたないのかもしれません。
「仕事」や「用事」という相手だって、"いくらでも後から後からと出てきます。"
そうして、忙しい"我々を悩ませます。"
IT技術の革新は日進月歩ですし、扱いきれないほどの情報が溢れ、
私たちを取り巻く環境は、どうしてもスピード重視にならざるを得ないようです。
でも、私たちの内側、心の世界は、そんな「外側の環境」にきちんと順応できて
いるのでしょうか。
「物質的には豊かになったのに、心のバランスを崩す人が増えている」
これは、世間でもよく言われていることです。
心の不調は色んな形で表れてきますし、その引き金となった要因も
人によって様々です。
でも根本的には、置かれている外側の環境にばかり目を向け適応しようと
したため、内側の世界を置き去りにしてしまったことが、その人の心の深い
部分での地殻変動を引き起こしてしまったことによるものが少なくないようです。
「無意識からの逆襲」です。
どんなに恵まれた環境に置かれていても、この逆襲に襲われたら、
苦痛を避けることはできないでしょう。
「根なし草」という言葉があります。
日頃は見えないけれど、でもこの「根」が、地面の中できちんと育ち伸びて
いるからこそ、外側の木や花も大きく育つことが出来ます。
根がきちんと張っていないと、地面の上で成長した木や花も、何かの拍子に、
ポキッと折れてしまうことになりかねません。
これが「根なし草」です。
見えないがゆえに、ついついおろそかにしがちですが、
やはり「根」は大切なのです。
外側で、雨が降ろうが風が吹こうが、丈夫な根が育っているからこそ、
倒れることなく、いつか綺麗な花を咲かせ、立派な実がなる木に育つことが
出来るのです。
あなたの見えない根は、今どのような状態でしょうか?
人の一生は、重き荷を負うて遠き道をゆくがごとし。いそぐべからず。
(徳川家康)
少し歩みを緩めて、あなたの根である心にも、たまにはきちんと向き合い、
栄養を与えてみること。
決して無駄ではないと思うのです

(c)bakuhatuya|写真素材 PIXTA
"ありがとうございます"


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