Forest Bud /
Dominic Alves


前回の記事で、カウンセリングにおけるカウンセラーの関わり方、

「何もしないこと」について書きました。

今日はその続きです。


カウンセリングに来られるクライエントさんは、大抵、何かの「答えや解決」を求めておられます。

中には、「とにかく話を聴いてくれればいい」、「誰にも言えない思いを吐き出したい」と、

抑えきれない感情を吐露する場を求めてお越しになる方もいらっしゃいますが、

そのような方でも、気持ちが落ち着いてくれば、やはりその、「抑えきれない感情」を

引き起こした原因をどうにかしたいと、今度はそちらに意識が向き始めます。

特に心を悩ませるようなことがないのに、カウンセリングを受けようと思われる方は、

私が知っている限り、まず、いらっしゃいません。

というより、かなり切羽詰まった思いを抱えておられるからこそ、

カウンセリングを受けようと思われる方が、やはり多いと思われます。


そんな思いを抱えておられるクライエントさんに、河合隼雄さんが言われた、

「カウンセリング(カウンセラー)とは、何もしないことを一生懸命することだ」というお話をしても、

ピンとこないかもしれません。

「カウンセラーが何も答えてくれないのなら行く意味がないではないか」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。


何より私自身が、初めてこの話を聞いたとき、その意味するところがよく分かりませんでした。

「答えはクライエントが持っているのだから」という言葉の意味は何となく掴めても、

「じゃあ、カウンセリングを受ける意味って?」と、頭に疑問符が出てきてしまったのを覚えています。




では改めて、カウンセリングとは何なのか。

何のために、貴重なお金と時間を使ってまで受ける意味があるのか。


この点について、河合隼雄さんがご自身の著書の中で、

「カウンセリングの秘密」という言葉を用いて、とても分かりやすく書かれています。


「私(クライエント)が私の現在の立場で私の考えだけで考えても答えは出てこないんです。

答えが出ないからカウンセラーのところへ行っているわけです。

ところがそのときに、そういう場所もきまっているし、時間もきまっているし、

きまった人が会ってくれると、自分でも思いがけないことが出てきます。

きょうは全然言う気のなかったこととか、そこまで話す気はなかったことが、

その場でいっぱい出てきます。

ここにカウンセリングの秘密があります。

出てきたことに自分で驚きながら、それを自分で考えて、クライエントが自分で成長していくわけです。

クライエント自身が自分でもいままで思いもかけなかった新しい考えが出てきて、新しい力を獲得し、

新しい生き方を発見して治っていく場を提供しているということです。」


「カウンセリング」という、安心して全てを出せる自由な場において、

カウンセラーという他者と対話を重ねることによって、クライエントさんが自分自身の内にあった、

「新しい考えや新しい力」に気づいていく。

これが、「カウンセリング」なんですね。

(だから、カウンセラーとクライエントの相性は大切なのです)


私自身も、教育分析という場において、内側を見つめるワークを続けていますが、

確かに河合先生がおっしゃるとおり、毎回のセッションがどのように進んでいくか、何が出てくるかは、

一言で言うと、「分からない」んです。

でもだからこそ、「えっ?」という、自分でも思いがけない何かが出てくることもあって、

しかも時に、その何かが「大きく自分(の考え方や捉え方)を変える」こともあって、

そうなると、もう誰に何を言われるでもなく、自分の中で悶々としていたことが

氷が溶けるようにスーッと自然に消えたり、こだわっていたことが気にならなくなったり、

思い切って行動を変えることができたり、ということに繋がってくるわけです。



人って、他人に色々言われても、結局は、

 「自分で本当に納得しなきゃ、変わらないし、変えられない」

のだと思います。


だからクライエントさんが、いくらカウンセラーに答えを求めていたとしても、

その答えが「何か違う」と思ったら、やっぱりどこか釈然としない・・・。

「そうなのかなー」と思いつつも、やっぱり何も変えられない。

場合によっては、

「そんな“答え”は私が本当に望んでるもんじゃない!」と反発したくなったりするのかもしれません。


そして、その「自分自身の納得」ですら、いわゆる“本物”でなければ、

結局は何も変わらないということになるのかもしれません。

だから、頭だけで変えようとしてもダメなんですね。

自分自身のまだ知らぬ内側、“無意識の声”を聴いていく必要があるのだと思います。

河合隼雄さんが書かれている、

「クライエント自身が自分でもいままで思いもかけなかった新しい考えが出てきて」

というのはいわゆる、“無意識の声”なのだと、私は思います。



他にも、河合先生はこのようにも言われています。

「クライエントというのは、われわれ(カウンセラー)のところへ来て、われわれを土台にして、

その中で、いろんな心の中の探索をして、その中から新しいものを何か見つけだしていかれるという

感じがするんです。」

「カウンセリングというのは、一回一回、また、全体を通じて、それは一つの創造活動である、と思うと、

非常におもしろいと思います。」


私たちはみな、自分自身の内側に秘められたままになっているものがあり、

それを見つけ出すことによって、自らを変えていく力を持っているんですね。


だからこそ、カウンセラーは「何もしてはいけない」わけです。

それは、カウンセラー側の思いで、クライエントさんの創造性を阻害してはいけないということです。

決して、「何も考えずにただお話を聞いている」ということが、「何もしない」ということではなく、

クライエントさんが持っておられるこころの可能性を信じて、一緒にそのプロセスを歩んでいく。

これが、カウンセラーの本来の役割なのです。


「こころの可能性」を、少なからず実感できるようになってからは、

河合隼雄さんが言われた意味がやっと分かるようになってきました。

そして今では私も、「カウンセラーの本来の役割」を忘れないよう努めていきたいと思っています。



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