先日ご結婚された、英国王室のウィリアム王子とキャサリン妃。

キャサリン妃のたおやかな美しさと、ウィリアム王子の妃殿下に向けられる優しい眼差しが、本当に素敵でした。


そんな式の様子をマスメディアを通じて拝見する中、私はあることも気になりました。

それは、ウィリアム王子の紋章です。

  
   220px-Coat_of_Arms_of_William,_Duke_of_Cambridge_svg(ウィリアム王子の紋章)



元々、イギリスの国章にはライオンとユニコーンが描かれており、
ライオンはイングランドの象徴、ユニコーンはスコットランドの象徴だそうです。

  
    250px-Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_svg(イギリスの国章)


   
ちなみに、ウィリアム王子の紋章には3つの赤いホタテ貝が描かれていて、
これは、母であるダイアナ元皇太子妃、スペンサー伯爵家の紋章からとっているそうです。
(画像が小さくて見えにくいですが、レイブルの3つの垂れの真ん中、ライオンとユニコーンの首下にも一つずつ、赤いホタテが描かれています。)




紋章学については知り得ていないのでこれ以上は触れませんが、
「ユニコーンとライオン」。

これについてはユングが、錬金術や各地の宗教や伝統におけるその象徴的意味について論じています。



まず、ユニコーンとライオンは共に、錬金術における「メルクリウス」の象徴であるとユングは言っています。



「メルクリウス」の変容性と多様性は錬金術の根本表象でありますが、それゆえに、
その象徴が意味するところを、一言で「こんなもの」と説明し解することはた易くはありません。

個人的には、ユングが「メルクリウス」について延べている、次の内容がイメージしやすいと思われますので挙げてみます。


メルクリウスは(錬金術でいうところの、すなわち無意識の)作業(オプス)の始めに位置し、終りに位置する。

メルクリウスは原初の両性具有存在ヘルマプロディトスであり、一旦は二つに分れて古典的な兄−妹の対の形を取るが、最後に「結合」において再び一つに結びつき、「新しい光」すなわち「賢者の石」という形態をとって光り輝く。

メルクリウスは金属であるが同時に液体でもあり、物質でもあるが同時に霊でもあり、冷たいが同時に火と燃え、毒であるが同時に妙薬でもあり、
「諸対立を一つに結びつける対立物の合一の象徴なのである。」

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「メルクリウス」は、いわゆる我々の無意識、心的世界の一つの表象といえます。

ちなみに、ユニコーンやライオンの他にも、鳩、鹿、鷲、龍などなど、
メルクリウスの同義語はいくつもあります。

それにしても、「金属であり同時に液体である」とか、「物質でもあるが同時に霊でもある」とか、「冷たいが同時に火」、「毒であり同時に妙薬」・・・。

“何だそれ?”と首を傾げたくなりますね。

でもこれ、「無意識」というものをよく表しているのです。


私は夢分析(夢は無意識の産物です)を受けていますが、いわゆる無意識世界の内容を理解することは、メルクリウス同様、一筋縄ではいかないなと実感しています。

あちらが示してくる内容は、本当に多義的で、個人によってもそれぞれ違いがあります。

だから、「メルクリウス」のモチーフがこれだけ多岐にわたることも、なるほどと頷けます。



ユニコーン自体、「キリストであり、悪魔である」という両義的な意味を持つようです。

一角獣はもともと怪奇な空想動物であって、それゆえ内的な対立を、そしてまた「対立の結合」を内包しているのである。【ユング】

また、

「ユニコーンは獰猛な恐ろしい動物であるが、処女の懐に抱かれる(胎内に入る)ことにより、穏やかになる」という伝説もあり、処女(マリア)と一角獣が描かれている絵画がいくつも存在しています。



前記しました、ウィリアム王子とイギリス国章に描かれているユニコーンは、
金色の鎖で繋がれていますが、これもユニコーンが危険な生き物であるからとのこと。

一方中国においては、一角獣は麒麟として表され、四足の動物の内で最高の存在とされており、立派な皇帝や偉大な賢人の誕生の際に現われ、傷つくと禍いの前兆であるとされています。

あの孔子が誕生する前には麒麟が現れ、その死の前には麒麟が傷つけられる事件が起こったと伝えられているそうです。

聖なる存在であると同時に、恐ろしい怪物でもあるというのが、ユニコーンなんですね。




メルクリウスも、最低の形態と、最高の形態を兼ね備えています。

そして、我々の内にある無意識も同様に、素晴らしいものであると同時に、
恐ろしいものでもあるのです。

善−悪、明−暗など、あらゆる対立を内包しているのが無意識であるという論は、ユング思想の根幹をなすものです。


神性の力は単に精神において顕現するばかりでなく、人間の内部および
外部の自然の狂暴な獣性においても顕現するのである。

神性は、人間が自然との関係にある限りアンビヴァレントなものであり、二つの顔を持つ。
                         【ユング】



私たちは、内側にあるこの対立物を結合させることによって、

「『新しい光』すなわち『賢者の石』」

を手に入れることができます。




さて、最後に、ウィリアム王子のご結婚へお話を戻します。

故ダイアナ元皇太子妃がご結婚された様子を、当時子供だった私は、
母と一緒にテレビで観た記憶があります。

そしてその後、私も未成年で母を亡くし、結婚して、今は親になりました。


ウィリアム王子とキャサリン妃が結ばれ、新しい家庭を築かれていくこと。

ダイアナさんも喜んでおられるでしょうね。

この度のロイヤルウェディング。なぜか私も嬉しいのです。




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