(近所の桜も今が見頃です)


カウンセリングにおける「話すこと」について、先日ある事例をご紹介しましたが、

コーチングのクライアントさんからも、同じようなことを言われたことがあります。


セッション後に、

「昨日のセッションでは、色々と話したことで、あとでとても気持ちがすっきりしました。

そして、自分が本当にどうしたいかが分かりました。ありがとうございました。」

という、嬉しいメールをいただきました。

その日のセッションでは、「聴く」ことを中心に進んでいったのですが、

コーチングでも、質問よりむしろ聴くことが主体になるケースがあります。


ある経営者の方もこう言われていました。

「自分がコーチに求めることは、“とことん聴いてもらう”ことだ。

自分がどうしたいかは、自分が一番良く知っているので、それを会話の中から引き出してほしい。

話すことで、考えや気持ちの整理をつけていく。自分にとってコーチングを受ける意味はそこにある。」


もちろん、コーチに積極的に関わってほしいと望まれるクライアントさんもおられます。

コーチングの場合は、カウンセリングに比べて、聴き手も能動的に関わっていくことが

求められますが、でもやはり基本は「話すことで自己洞察を深めていく」。

コーチが投げかける質問は、あくまでもご本人の自己洞察を深めるための二次的なものです。

自分の内にあるものを表面に上げる。気づき。意識化。

これがまさに、カウンセリングにおいても、コーチングにおいても重要なんですね。


私自身のことですが、過去に気持ちが固まってしまっていて、今考えたら「そんなこと」と思えるような

些細なことすら、「誰にも話せなくなっていた」時期がありました。

客観的にその時を振り返ってみると、正直とてもしんどかったように思います。

そして、一人で抱え込んでいるその重みに、心は確かにSOSを出していたのだと、

当時の体調などを思い起こすと、今になってみてよく分かるのです。



その人が無意識内に抑圧し忘却していた内容を想起し、

それに伴う情動を表出し解放することによって、

結果的に意識の拡大と支配力の増大が生じることを

『カタルシス効果』 といいます。

ここでいう、「情動を表出し解放すること」とは、非言語であれば、

絵を描くことやいわゆる箱庭療法のような何かを作ること、

その他とにかく“表現すること”で可能になります。

そして、ただ話すこと。

それだけでも私たちは確かに、「心にあるものを出してすっきりする」ことが出来ますよね。

(ただし、聴き手が誰でもよいわけではなくて、そこは「安心して何でも話せる場」でなくては

いけません。だから、カウンセラーやコーチが存在する意義があるわけですし、

さらに“相性”も大事なのです。)



こころの「無意識」に押し込んでしまったもの、また元々そこにあるものによって、

確かに我々の表面(意識)は色んな影響を受けているわけですから、

心の奥底にあるものを出すことは、本当に大切なんです。

出してこそ、それに対する「意識できる(知ってる)私」による支配も可能になってくるのですから。



では今日は最後にユングのこの言葉を。

「“自己認識”というと、ふつう人は、おのれの意識的な自我人格に関する知識のことだと思っている。

そもそも自我意識を持つことのできる者はだれでも、自分自身を知っていると、

あたりまえのように信じ切っている。

ところが自我は単なる自我意識の内容を知っているにすぎず、無意識やその内容はまるで知らない。

自分にはほとんど隠されていて見えない本当の心的要素は、度外視しているものである。」

※ユング心理学では、自我とは意識の中心部分であり、
  自己とは意識と無意識を含めたこころの全体像(及びその中心)を指します。



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