Gerberas /
Katy


今日は、ご本人に承諾を得たうえで、
ある方の『ワークキャリア』にまつわるお話をご紹介したいと思います。


ワークキャリアに関するご相談でお越しいただいた20代の女性、
「Bさん」は、今の職場に勤めるようになって3年ほどになります。

そして、来年には昇進することが既に決定しており、
現在より責任の重い、職場を取りまとめるマネージャー的立場に就くとのこと。

しかし、Bさんご本人は、この昇進を前に、大きなプレッシャーと葛藤を抱えておられました。


自分の今までの業績を評価され、より大きな権限を持つことができるようになるにも関わらず、
Bさんが、昇進に「嬉しさとやりがい」より、「プレッシャーと葛藤」を感じておられるのには、
もちろん訳がありました。


連日、日にちが変わってから帰宅というサービス残業が続き、
夕食はいつも、深夜のコンビニで済ませるという毎日。
また、せっかくの休日にすら仕事が入るときがあり、
なかなか、「ゆっくりと仕事以外の自分の時間」を持つことが出来ない、
仕事漬けの3年間を、ずっと送ってこられていたのです。

そのオーバーワークに、就職後すぐに体調を崩し、様々な症状に悩まされ続けたとのことです。

そして、「いずれは辞めよう」というお気持ちを抱えながらも、その本心を出せないまま、
ずっと頑張り続けておられたのですが、そんな中、上司から「昇進」の話を伝えられ、
「今まで以上に忙しくなる。責任が重くなる。」ことが自明の理だと感じられた時、
「もうこれ以上、勤められない。辞職しよう。」と、決断されたとのことでした。


「しかし、重要なポストに就くことが決まっている中、辞意を伝えても、
会社側は全力で引き止めてくるだろうし、現実すぐに辞めることはできないだろう。
それを考えると、どのように辞意を伝えれば、会社側に納得してもらい、
スムーズに退職できるか、早く伝えたいという意思とは裏腹に迷っている。」
そのような思いを抱え、私とのセッションに臨まれたわけです。


そうして、未来への展望も含め、色々とお伺いしながら、
セッションもそろそろ終わりの時間となり、
私は、「では最後に、何か伝えておきたいこと、聞きたいことなど、ありませんか?」
と言うと、Bさんは、遠慮がちにこのように言われました。

「私、“軽い”でしょうか?」

こう言われて、一瞬私は何のことだか分からず、逆に聞き返してしまいました。

「えっ?“軽い”、ですか?」


Bさんは、3年間も激務に耐えてこられながら、それでもなお、
辞職を決意したご自身のことを、
「この自分の決断は、軽いのではないか?」と、気にされておられたのです。

“軽い”の意味が分かった時、私は、
「よくぞ今まで、3年間も頑張ってこられたと思います。」と思わず、
頭で考えるより先に、素直な思いを口にしてしまったのですが、
(この時の私は、Bさんの言葉に少しビックリしていたのです)
それを聞いたBさんは、何かのスイッチが入ったかのように、
涙を流され始めました。

それまで、整然とお話をされていたBさんが、
最後の場面で、抑えきれず流したその涙が、
Bさんの3年間の忍耐と思いを、全て表しているような気がしました・・・。



Bさんのお話をうかがって、
仕事に人生の大半の時間を奪われ、激務により体調まで崩しながら、
それでも、頑張り続けておられる方が、一体どれくらいいるのだろう、
と、改めて考えさせられました。

私も以前は、長らく組織に勤めていましたが、その時、
当時まだ20代だった同僚が、Bさんと同じように、
毎日毎日深夜まで仕事をして、家に帰るのは寝るだけという日々の中で、
「布団に入ると、悲しいわけでもないのに、なぜか涙がでてくることがある。
自分は何のために生きているんだろうと、思うことがある。」
と話していたことを、思い出しました。

一般的には、生きていくためには仕事をしなければならないですし、
そのために、職業を選ぶにしろ、実際の職場で勤めるにしろ、
そこに、自分の自由な意思や、選択権をどこまで持てるかは、
個人の条件によって様々だと思います。

そして現実問題、給料をもらい、組織という集団に勤めるということは、
何かしらの制約の中で、耐える場面が出てくるのは避けられないことだとも思います。

でも、その中で、どこまで“自分を見失わない”でいられるか。
「自分は何のために生きているんだろう」
「自分は何のためにこの仕事を続けているんだろう」
という、“本来の目的”を忘れてしまうような働き方をしてはいないだろうか。

時には立ち止まって、自分に深く問いかけることは、
限られた人生を送る中で、とても大切なことだと、
私は自身の経験も踏まえたうえで、そう思います。



ご自身の決断によって、大きな転機を迎えることになったBさん。

セッションの中では、今まで興味があっても手をつけられなかったこと、
辞職後に、自分の本当にやってみたいと思えること、
についても、お聞かせいただきました。

そして、そのことをお話になっている時のBさんの表情には、
未来へ向けての生き生きとした明るさがありました。


私も、数年前に長年勤めた職を離れ(私自身もその当時、迷いの中にいました)、
今振り返ると、その時が大きな転機だったなと感じています。

それぞれが、様々な形で迎えるこの「転機」。
キャリア発達理論においても、その意味について取り上げられています。


・・・では、この続きはまた次回に。



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