blue-gold beetle on leaf /
Austin Turner

前々これまでの記事回の記事 を始め、今までに幾度か、
「シンクロニシティー(共時性)」について取り上げてきましたが、
ユングは勿論のこと、日本人のユング派の方の著書にも、
シンクロニシティーの“体験談”が書かれているのを読んだことがあります。

これから、それらの一端をご紹介したいと思います。



まずは“ユング”です。
有名な話は、ユングが自身の患者の死を、“感じた”というエピソードです。

『ある日ユングは、講義の後、旅先のホテルで床に入り、なかなか寝付けずにいました。
そして夜中、ようやく眠りに入ったころに、何かに驚いて目を覚まし、
誰かが部屋に入ってきたと感じます。
しかし、辺りを調べてみても、何事もありません。
「変だな。確かに誰かが入ってきたのに!」

そしてその時に起こったことを正確に思い出してみると、
「私はまるで何かが私の額、それから後頭部を打ったような鋭い痛みの感じに
目を覚まされたのだと気づいた」 のです。
次の日、ユングは自分の患者が、拳銃で自殺したという電報を受け取りました。
そして、その患者の頭蓋後壁に小銃弾が残っていたことも、後になって知りました。』


ユングは、この出来事について、このように述べています。

この経験は元型的な状況―この場合は、死―と関連して非常にしばしば観察されるような一つの純粋に同時的な現象であった。
無意識における時空の相対化によって、私は現実には他所で起こっている何かを知覚することができたのである。
集合的無意識はすべての人に共通である。    
                                                   『ユング自伝 1 』(みすず書房)




もう一つ、ユング自身が書き遺している、ある体験談があります。

『ユングが治療していた女性患者が、治療の重要なポイントで、黄金のスカラベ(コガネムシ)を与えられる夢を見ました。(ユング心理学で治療の中核をなすのは“夢分析”です。)
そして、この夢について、女性がユングに話をしているまさにその時、ユングの背後の窓ガラスにコツコツと何かが当たる音がしたので開けてみると、その音の主は、飛んできた“コガネムシ”でした。
しかも、普通“コガネムシ”は、明るいところに向かう性質があるのに、この時には不思議に、ユングたちの居た暗い部屋に入ろうとしていたのです。』

このスカラベ(コガネムシ)の“非合理的な出来事”は、固い合理主義者だったその女性患者に、決定的ともいえる影響を与え、変容のプロセスが動き始めたとの事です。


ユング自身の言葉です。
(進展が見られなかった女性の治療について)
明らかに、私の力を超えた何かまったく非合理的なことが生じる必要があったのだ。


ちなみに、スカラベは、「再生の象徴の古典的な例である」とも、ユングは指摘しています。

頑固な合理主義者だったが故に、ユングを始めとする医師に(ユングの治療を受ける前に、既に二人の医師の努力があったようです。)診てもらわざるを得なかったであろう、彼女の心の変容→再生に、「再生の象徴をもつ(この象徴の意味についてもユングは記していますが、ここでは割愛します)」スカラベが、“非合理的なできごと”として現れた、という事実は、やはり、とても意味深いように感じられます。



さて、これらの出来事を始めとして、ユングは、その他にも、「非合理的な」現象を、多数経験していたようです。

しかし、このようにも述べています。

私は、(中略)ここで報告した事実(スカラベの出来事)が本当のことであることを十分に知っているが、こうしたことはあくまでも「偶然」にすぎないのだと確信している人々の考えをこの話で変えられるとは少しも思っていない。
このできごとを述べたのは、実際生活のなかでいかに意味のある偶然の一致がよく生じているのか、単にその例を示したかったからにすぎない。      
               『エッセンシャル・ユング』(創元社) 


以前にもブログで書きましたが、ユングは自分の経験を通して、
シンクロニシティ(共時性)の概念を確立したことが理解できます。


ユングの信頼を得て、個人的秘書も務めた「アニエラ・ヤッフェ」もこういっています。

科学者としては、彼(ユング)は経験論者である。

経験論者であるからこそ、ユングは“異論”があることも十分承知していたのですね。

でも、“非合理”な現象に、偏見を持たず、ただただ事実を見据え、
正面から取り組んだユングのその理論を、支持する人たちも沢山いるということは、
そこにもちゃんと意味があるのだと、私は思います。


では、今日は最後にユングのこの言葉を。

集合的無意識の仮設抜きでは、説明しがたいような象徴的対応現象が生じる事例に、心理学者はつねに応じざるをえない。


次回はこのユングの言葉につながるような、他の事例をご紹介したいと思います。
(また“日が空いてしまう”かもしれませが・・・)



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